幹細胞培養上清液点滴(エクソソーム)
幹細胞培養上清液点滴(エクソソーム)とは
幹細胞とは
幹細胞は、自己複製能力と多種多様な細胞に分化する能力(多能性)を兼ね備えた特別な細胞です。これらの特性により、体内で組織の修復や再生を行うことが可能になります。
1.自己複製能:同じ機能を持つ細胞に分裂できる能力
2.多能性:皮膚や血液、神経、血管、骨、筋肉など、さまざまな細胞に分化する能力
私たちの体は約60兆個の細胞から構成されていますが、毎日約200億個の細胞が死滅し、新しい細胞が補充されています。加齢や病気により細胞の機能は徐々に衰えますが、損傷した細胞を修復し、失われた細胞を補充するのが幹細胞の役割です。
幹細胞再生医療とは
幹細胞再生医療は、傷んだ組織や臓器の機能を回復させることを目指す医療で、主に培養された幹細胞を患部に移植し、再生を促します。
再生医療には、自分の細胞を使用するケースと他者の細胞を使用するケースがあります。再生医療等安全性確保法に基づき、それぞれのリスクに応じて以下のように3段階に分類されます。
・第一種(高リスク):他者の細胞やiPS細胞、ES細胞を使用する治療
・第二種(中リスク):自分の幹細胞を培養して用いる治療
・第三種(低リスク):同機能の自分の細胞を加工し、培養せずに使用する治療
例として、PEAKやACPは第二種(中リスク)に該当し、PFC-FDや美容分野で行われる幹細胞培養上清液点滴は第三種(低リスク)に該当します。
幹細胞培養上清液とは
幹細胞を血清を含まない環境で培養し、細胞成分を取り除き、滅菌などの処理を行った上澄み液を「幹細胞培養上清液」と呼びます。
この培養上清液には、幹細胞が増殖する過程で放出した成長因子やエクソソーム、免疫調整因子などが豊富に含まれています。
これらの成分は、組織の再生や損傷した細胞を修復する効果を持っています。
幹細胞培養上清液点滴療法について
幹細胞培養上清液に含まれる成分を点滴で体内に投与する療法が「幹細胞培養上清液点滴療法」です。
低リスクの治療法として位置づけられていますが、幹細胞移植に匹敵する効果が期待されています。
肌のターンオーバーや血管再生、抗炎症効果など、さまざまな効果が得られることが報告されています。
幹細胞培養上清液点滴の効果と期待される作用
幹細胞培養上清液点滴には、血管再生、免疫調整、神経細胞の修復、骨再生、美容効果など、幅広い作用が期待されています。アンチエイジング効果も報告されており、細胞の老化を抑制し、肌の若返りをサポートします。
・血管再生/新生作用:硬くなり血流が途絶えた血管の修復したり、新たな血管を形成するなど、動脈硬化の予防・改善に役立ちます。
・免疫調整作用:炎症を抑える効果と傷ついた皮膚の再生が期待でき、アレルギーや自己免疫疾患の症状を緩和します。
・神経細胞修復・再生作用:神経細胞の成長促進・傷ついた神経の再生により、脳梗塞や脊髄損傷、末梢神経などの修復効果が期待されます。
・骨再生作用:骨再生が促進され、骨粗しょう症や歯肉炎(歯槽骨の再生)の予防や改善に役立ちます。
・スカベンジャー(活性酸素除去)作用:糖尿病の進行予防、疲労回復や生活習慣病予防に効果が期待できます。
・抗炎症作用:損傷した部位や炎症の軽減、関節のすり減りによる痛みの軽減に役立ちます。
・体細胞の分化促進作用:自己再生能力を高め、血管再生・血管新生など細胞の若返りを助けます。
・組織修復作用:肝臓疾患や皮膚疾患、アトピー性皮膚炎など損傷した組織の修復に効果を発揮します。
・美容作用:ターンオーバーを正常に導き血行を促進し、シワやたるみの改善、美肌効果が期待されます。
幹細胞培養上清液に含まれる主要な成長因子
・EGF(表皮細胞成長因子):肌のターンオーバーを促進し、新陳代謝を高めることで、シミやくすみの改善効果が期待できる成長因子です。
・aFGF(線維芽細胞成長因子):コラーゲンやエラスチンの生成を助け、真皮の修復を促すことで、シワの改善や美白効果が期待されます。
・bFGF(塩基性線維芽細胞成長因子):皮膚や血管、筋肉などの細胞の増殖や分化を促す成長因子で、神経や骨の形成にも重要な役割を果たします。
・VEGF(血管内皮細胞成長因子):既存の血管から枝分かれした新たな血管を形成する血管新生を促します。
・KGF, FGF-7(上皮細胞成長因子):毛母細胞に作用し細胞増殖を高め、育毛や発毛を促進します。
・IGF-I(インスリン様成長因子):コラーゲンやエラスチンの生成を促進し、肌のハリや弾力を回復させます。
・TGF-β(トランスフォーミング成長因子):抗炎症効果を持ち、敏感肌の改善に役立ちます。
・HGF(肝細胞増殖因子):肝細胞の増殖を促進します。肝臓のみならず、さまざまな組織・臓器の再生と保護に効果を発揮します。
・PDGF(血小板由来成長因子):組織修復に関わる幹細胞の活性化を促し、細胞分裂を促進、細胞増殖をサポートします。
幹細胞培養上清液の種類
・歯髄幹細胞培養上清液:歯の中心にある神経組織である「歯髄」から得られる上清液です。神経系や骨髄系の幹細胞が豊富に含まれているため、神経の修復や活性化、臓器の機能改善効果が期待されます。
・臍帯幹細胞培養上清液:新生児の臍帯(へその緒)から採取される幹細胞を用いた上清液で、骨髄系や間葉系幹細胞を多く含みます。若い細胞が多く含まれ、組織再生への効果が期待されます。
・脂肪幹細胞培養上清液:脂肪組織から採取された上清液で、間葉系幹細胞が含まれており、皮膚のコラーゲン生成や頭髪の再生を助けます。
・骨髄幹細胞培養上清液:骨髄から採取される幹細胞に由来する上清液です。採取が難しいため、脊髄損傷や血液疾患の治療に使われることが多いです。
臍帯由来の臍帯幹細胞培養上清液は、脂肪由来の脂肪幹細胞培養上清液よりも成長因子(サイトカイン)の含有量が多いとされています。臍帯幹細胞培養上清液は市場に流通する割合が約1%と希少で、より高価で高性能というイメージがあります。
一方で、脂肪幹細胞培養上清液は倫理的問題や発がんリスクが低く、採取時の負担が小さく、管理しやすいというメリットがあります。
臍帯由来と脂肪由来の培養上清液の違い
臍帯由来の幹細胞は赤ちゃんのへその緒から採取されるため、その細胞は非常に若く、細胞年齢1年以下です。一方、脂肪由来の細胞は、脂肪吸引や脂肪除去によって採取されたものが多く、その細胞年齢は高くなります。
若い細胞ほど分化能力が高いため、細胞年齢が高い脂肪由来の幹細胞は早期に分裂を終えてしまいますが、臍帯幹細胞はより長期間にわたり細胞分裂を続けます。
また臍帯幹細胞は、ES細胞に類似した性質を持つことが知られています。
この違いにより、臍帯由来の培養上清液には細胞修復に必要な成長因子(サイトカイン)が豊富に含まれているため、より高い効果が期待されます。
当院の幹細胞培養上清液点滴について
当院では、臍帯幹細胞培養上清液点滴(臍帯のウォートンジェリーという組織由来)を採用しています。
・安全性を確保: 東京大学ベンチャークリニックの先進医療研究に基づいて提供
・国際基準に準拠: 製造体制はすべて国際基準準拠
・厚生労働大臣許可取得: 特定細胞加工物製造の許可を取得
・厳選採取: 出産したばかりで母体が健康な日本人女性から採取、感染症検査で陰性を確認
日本製の点滴です。
シングル1回 | 29,800円 |
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ダブル1回 | 59,600円 |
シングル4回(ダブルだと2回)セット | 107,200円 |
エクソソーム点滴との違い
幹細胞培養上清液に含まれている約500種類の成長因子(サイトカイン)の一つに、「エクソソーム」と呼ばれるものがあります。エクソソームは体液中に存在し、その表面には細胞膜由来の脂質やタンパク質、内部には核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAなど)やタンパク質などの細胞内物質を含んでおり、細胞間での情報伝達を担っています。
エクソソームは体内の幹細胞を活性化させるだけでなく、血管再生や抗炎症作用を促進し、損傷した細胞を修復する役割も果たします。また、老化した細胞の機能を改善するため、エイジングケアや美容に役立つとされています。
エクソソーム点滴はこのエクソソームを豊富に含むように培養された培養上清液を使用していると推察されます。豊富に含まれたエクソソームの働きで、肌のターンオーバー促進やコラーゲン生成、抗炎症作用などの効果が期待され、美肌や若返りを目的とした治療に利用されています。
幹細胞培養上清液点滴に使用される幹細胞培養上清液に含まれるエクソソームは生理的な量で、エクソソーム以外にもさまざまな成長因子が含まれています。そのため、美容だけでなく、多くの疾患にも効果が期待されています。
効果の持続時間と点滴頻度
幹細胞培養上清液点滴は、早ければ初回投与後2〜3週間で効果が現れることが多く、その効果はおよそ3ヶ月から6ヶ月続きます。これは、修復された細胞が次の細胞に入れ替わるまでの期間に相当します。
2週間から1ヶ月に1回くらいの頻度で継続的に点滴を行うことで、より長期的な効果が期待できます。
文献により持続時間や頻度の説明には幅がありますが、1〜2ヶ月ごとにしばらく続けることがオススメです!(点滴時間は30分程です)
副作用・禁忌・注意事項
副作用
・注入部位に一時的な痛みや皮下出血が生じることがあります。
・めまい、耳鳴り、低血糖の症状が現れることがあります。
・アナフィラキシー反応が発生する可能性があります。
禁忌
・脳梗塞、心筋梗塞、血液凝固異常症、がん治療中の方
・がんと診断され、寛解後5年が経過していない方
注意事項
・献血ができなくなります。