膝の再生医療(PFC-FD療法・培養幹細胞治療)は、すべての方に向いているわけではありません。
①保存療法をまだ十分に行っていない方、②骨の変形が高度に進んだ方、③膝の腫れ・炎症が強い急性期の方、④「軟骨が完全に元通りになる」と期待されている方、⑤感染症など医学的リスクがある方——この5つに当てはまる場合、当院ではまず別の治療をご提案しています。
この記事では、人工膝関節置換術を700件以上執刀してきた立場から、「再生医療をお勧めしない基準」を正直にお伝えします。
「再生医療って、本当に効くんですか?」——外来で毎週のようにいただく質問です。テレビやインターネットで話題になる一方、決して安くない費用がかかる治療ですから、迷われるのは当然です。
当院は再生医療を提供していますが、同時に保険のリハビリテーションも行う整形外科であり、院長は人工膝関節置換術を700件以上執刀してきた医師です。
だからこそ、「あなたには再生医療より先にやることがあります」「あなたの膝は手術を考える段階です」と正直に申し上げられる立場にあります。
なぜ「向かない人」の話から始めるのか?
結論からいうと、再生医療は「魔法の注射」ではなく、効果が見込める条件がはっきりしている治療だからです。
再生医療しか提供していない医療機関では、来院された方に再生医療以外の選択肢を提示することが難しいのが実情です。
当院では診察の結果、「まだ保険診療で十分に良くなる段階です」「その膝は手術のほうが確実です」とお伝えすることが実際にあります。
膝の診療5万件以上の経験から言えるのは、治療の順番を間違えないことが、結果への一番の近道だということです。
膝の再生医療が「向かない人」5つの特徴
次の5つに当てはまる方は、再生医療の前に(または代わりに)やるべきことがあります。

① 保存療法をまだ十分に行っていない
体重コントロール、理学療法士による運動療法・動作の改善(膝が内側に入る「ニーイン」などのクセの矯正)、インソール——これらの保存療法で痛みが大きく改善する方は少なくありません。
運動療法は変形性膝関節症の治療の土台として、各国のガイドラインで最も強く推奨されています(日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン)。
土台を飛ばして注射だけを行っても、痛みの原因である「膝の使い方」が変わらなければ、効果は長続きしません。
② 骨の変形が高度に進んでいる(進行度グレード4など)
軟骨がほぼ失われ、骨同士が直接ぶつかり、O脚変形が強い状態では、再生医療で痛みの十分な改善が得られにくいことがわかっています。
この段階では、人工膝関節置換術のほうが確実に生活の質を取り戻せる場合が多く、当院では手術のメリット・デメリットを含めてご説明します(手術が必要と判断した場合は、札幌医科大学附属病院などの関連病院へご紹介し、術後のリハビリテーションは当院で継続していただけます)。

③ 膝が熱を持って腫れている「急性期」
強い炎症があるときは、まず炎症を落ち着かせる治療(関節穿刺、薬物療法などの応急処置)が先です。炎症の火が燃えさかっている状態では、再生医療の効果を正しく判定することもできません。
④ 「軟骨が完全に元通りになる」と期待している
正直にお伝えします。現在の再生医療は「すり減った軟骨を完全に再生させる」治療ではありません。期待できるのは痛み・炎症の軽減と機能の改善であり、効果には個人差があります。
ここの期待値がずれたまま治療を受けると、「高いお金を払ったのに」という後悔につながってしまいます。
⑤ 感染症・悪性腫瘍の治療中など、医学的なリスクがある
膝や全身に活動性の感染がある方、がん治療中の方などは、安全性の観点から適応を慎重に判断します(診察時に必ずお申し出ください)。
逆に「向いている人」は?
保存療法を続けても痛みが残る、でも手術はまだ受けたくない——その「間」にいる方です。
- ヒアルロン酸注射を続けているが、効果が短くなってきた(ヒアルロン酸は「応急処置」であり、根本治療ではありません)
- 運動療法・インソールを数ヶ月続けても、痛みで趣味や仕事に支障がある
- レントゲン・MRIで中等度までの変形(目安:グレード2〜3)
- 手術を回避したい、あるいは手術までの時間を良い状態で過ごしたい
このような方には、PFC-FD療法または培養幹細胞治療が選択肢になります。どちらが適するかは、診察・画像検査のうえでご提案します。

自分が再生医療に向いているか知りたい方へ
再生医療は、すべての膝に適しているわけではありません。専用ページでは、PFC-FD療法・培養幹細胞治療の仕組み、治療の流れ、費用、リスクや注意点をご案内しています。
当院の判断プロセス(受診から治療決定まで)
「診断 → 保存療法の確認 → 適応判定」の順番を、必ず守ります。
- 診察・画像検査(レントゲン、必要に応じてMRI)で、痛みの本当の原因を特定します
- 保存療法の実施状況を確認します。まだの場合は、まず保険診療の範囲で運動療法・動作指導・インソールをご提案します(当院の理学療法士が歩き方まで評価します)
- それでも痛みが残る場合に、再生医療(PFC-FD/培養幹細胞)と手術を含めた選択肢を、利点・欠点・費用まで並べてご説明します
- 決めるのはご本人です。保存療法・再生医療は当院で、手術が必要な段階なら札幌医科大学附属病院などの関連病院へご紹介し、術後のリハビリはまた当院で——最初から最後まで伴走します。

よくある質問
Q1. 再生医療を受ければ、手術は絶対に避けられますか?
いいえ。進行度や生活への支障の程度によっては、手術のほうが適している場合があります。当院院長は人工膝関節置換術を700件以上執刀してきた経験から、再生医療と手術の両方を知る立場で、中立にご説明します。
Q2. 年齢が高くても受けられますか?
年齢だけで不適応になることはありませんが、変形の進行度・全身状態によって判断します。まず診察でご相談ください。
Q3. 費用はどのくらいかかりますか?
PFC-FD療法(PFC-FD2.0)は片膝1回(2V)税込161,000円、培養幹細胞治療(ASC療法)は片膝1回 税込980,000円・両膝1回 税込1,380,000円です。いずれも公的医療保険の適用外(自由診療)です。
当院からのメッセージ
私はこれまで、人工膝関節の手術を700件以上執刀してきました。
手術で笑顔を取り戻した方をたくさん見てきた一方で、「手術の前にできることが、まだこんなにある」ことも知っています。
再生医療はその選択肢のひとつですが、順番を間違えては本来の力を発揮できません。まずは、あなたの膝の「今の段階」を一緒に確かめるところから始めましょう。
膝の再生医療について、もっと詳しく
PFC-FD療法・培養幹細胞治療の仕組み、治療の流れ、料金は専用ページで詳しくご案内しています。「自分の膝に向いているのか知りたい」という方は、まず保険診療の診察からご相談いただけます。無理に自由診療をお勧めすることはありません。
自由診療に関する重要事項
- PFC-FD療法・培養幹細胞治療は公的医療保険適用外の自由診療です。
- 料金(税込):
- PFC-FD療法(PFC-FD2.0):片膝 1回(2V) 161,000円
- 培養幹細胞治療(ASC療法):片膝 1回 980,000円/両膝 1回 1,380,000円
- 主なリスク・副作用:注射部位の痛み・腫れ・内出血、まれに感染。効果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
- 当院は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、再生医療等提供計画を届出済みです。
- 国内で医薬品として承認された治療ではなく、同一の成分・性能を有する国内承認医薬品等はありません。







