変形性膝関節症と診断されても、すぐに手術になる方はごく一部です。
治療は進行度に応じて、
①運動療法・体重管理・動作改善(すべての土台)、②痛みを抑える薬・ヒアルロン酸注射(応急処置)、③インソール、④再生医療や骨切り術(保存療法で不十分な場合)、⑤人工膝関節などの手術(高度に進行した場合)——と段階的に組み立てていきます。
大切なのは「いま自分がどの段階にいるのか」を知ること。この記事は、そのための全体地図です。
「レントゲンを見て『変形してますね、年のせいですね』とだけ言われた」「手術しかないと言われたけれど、本当だろうか」——診断名の重さに比べて説明が足りず、不安を抱えたままの方がとても多い病気です。
膝の診療5万件以上の経験から、選択肢を一枚の地図にして順番にご説明します。
まずは動画でも解説していますので、あわせてご覧ください。
動画: ひざの痛み、変形性膝関節症かも?ひざ治療の手術と最新の治療法についてお話しします!(当院公式YouTubeチャンネル)
変形性膝関節症とは?——「軟骨のすり減り」だけが原因ではない
結論からいうと、クッション(軟骨)の摩耗に、「膝の使い方」と「筋力低下」が重なって痛みが出る病気です。
膝のクッションである軟骨は、加齢とともに少しずつすり減ります。
ただし、レントゲンで変形があっても痛みのない方はたくさんいらっしゃいます。痛みを左右するのは、変形の程度だけではありません。
- 膝が内側に入る歩き方・しゃがみ方のクセ(ニーイン)
- 太もも・お尻の筋力低下
- 体重による負担
——つまり、「変えられる要素」がかなり残されているということです。ここが治療戦略の出発点になります。

進行度(グレード)と治療選択の全体地図
下の表が、あなたの「現在地」を知るための地図です。
| 進行度の目安 | 状態のイメージ | 治療の中心 |
|---|---|---|
| 初期 (グレード1〜2) |
動き始めや階段で痛む | 運動療法・体重管理・動作改善+必要に応じて薬や注射 |
| 中等度 (グレード2〜3) |
痛む頻度が増える、正座がつらい | 上記+インソール。効果が乏しければ再生医療(PFC-FD療法・培養幹細胞治療)、O脚変形が原因であれば骨切り術も選択肢 |
| 高度 (グレード4) |
安静時・夜間も痛む、O脚が進む | 人工膝関節手術などを含めて検討。手術を選ばない・受けられない場合は培養幹細胞治療も選択肢 |
※グレードはレントゲンでの目安です。治療は画像だけでなく「生活がどれだけ困っているか」で決めます。

すべての段階に共通する「治療の土台」——運動療法
結論からいうと、世界中のガイドラインが最も強く推奨しているのは、注射でも手術でもなく運動です。
「軟骨がすり減っているのに、動かして大丈夫?」——大丈夫です。むしろ動かさないと筋力が落ち、膝の負担が増えてさらに痛むという悪循環に入ってしまいます(日本整形外科学会のガイドラインでも運動療法は強く推奨されています)。
当院では理学療法士が、
- 痛みを抑えながらできる筋力トレーニング
- 歩き方・しゃがみ方の動作改善(ニーインの矯正など)
- 靴・インソールの評価(理学療法士が歩き方まで見たうえで作製)
を個別に処方します。薬や注射(ヒアルロン酸)は、この土台づくりを進めるための応急処置として使うのが正しい位置づけです。
保存療法で足りないとき——再生医療と骨切り術という「中間の選択肢」
結論からいうと、「人工関節はまだ早い、でも保存療法では痛みが残る」という段階には、まだ手前の選択肢があります。
- 再生医療(PFC-FD療法・培養幹細胞治療)
ご自身の血液・細胞の力を利用する注射治療です。入院が不要で、仕事や生活を止めずに受けられます。ただし公的医療保険の適用外(自由診療)であり、向き不向きがあります(→膝の再生医療が「向かない人」) - 骨切り術(高位脛骨骨切り術など)
O脚変形によって膝の内側に負担が集中している方に対し、骨の角度を矯正して負担を外側へ逃がす手術です。ご自身の関節を残せることが最大の利点で、比較的お若い方・活動性の高い方に適することがあります(人工関節に比べて回復には時間がかかります)
どの段階でも、並行して運動療法を続けることが効果を活かす鍵です
手術以外の治療を検討している方へ
運動療法やヒアルロン酸注射を続けても痛みが残る場合、治療の選択肢として再生医療が検討されることがあります。PFC-FD療法・培養幹細胞治療の仕組み、適応、費用、注意点をご案内しています。
手術を考えるタイミング——「我慢の限界」まで待たない
結論からいうと、手術は「最後の手段」ではなく「最適なタイミングがある選択肢」です。
夜眠れないほどの痛み、平地を歩くのもつらい、外出が怖い——生活がそこまで制限されているなら、人工膝関節手術で取り戻せる生活があります。逆に、我慢しすぎて筋力が落ちてからでは、術後の回復も遅れてしまいます。
当院院長は、人工膝関節置換術を700件以上執刀してきました。執刀する側の経験があるからこそ、「まだ手術ではありません」も「そろそろ手術を考える時期です」も、中立にお伝えできます。なお、当院では手術は行っておりません。
手術が必要と判断した場合は、適切なタイミングで札幌医科大学附属病院などの関連病院へご紹介し、その後のリハビリテーションは当院で継続していただけます。
また、変形が高度であっても、ご年齢や持病の関係で手術が難しい方、どうしても手術を希望されない方もいらっしゃいます。そうした場合には、培養幹細胞治療が痛みを和らげる選択肢になり得ます(保険適用外・効果には個人差があります)。
「手術しかない」と言われて諦めてしまう前に、一度ご相談ください。
よくある質問
Q1. 変形性膝関節症は治りますか?
すり減った軟骨が完全に元に戻ることはありませんが、痛みと機能は多くの場合改善が期待できます。「変形しているから、ずっと痛いまま」ではありません。
Q2. サプリメントは効きますか?
軟骨成分のサプリメントが変形の進行を止めるという質の高い根拠は、現時点では限定的です。基本は運動と体重管理になります(詳しくは外来でご相談ください)。
Q3. 正座やスクワットはやめるべきですか?
痛みが出る動作を無理に続ける必要はありませんが、「一律に禁止」でもありません。膝の状態に合わせてやり方を調整しますので、自己判断で活動を減らしすぎないでください。
当院からのメッセージ
「変形性膝関節症です」とお伝えしたとき、患者さんの顔が曇る瞬間を何千回も見てきました。でも、この病気は「地図を持って歩けば」怖くありません。運動療法から再生医療まで当院で、手術が必要な段階なら信頼できる関連病院へお繋ぎし、術後のリハビリはまた当院で。地図の最初から最後まで、伴走する体制でお待ちしています。
膝の再生医療について、もっと詳しく
「手術はまだ受けたくない」「保存療法では痛みが残る」という段階の選択肢として、PFC-FD療法・培養幹細胞治療をご用意しています。仕組み・治療の流れ・料金は専用ページで詳しくご案内しています。まずは保険診療の診察で、ご自身の膝がどの段階かを確かめるところからご相談いただけます。
自由診療に関する重要事項
- PFC-FD療法・培養幹細胞治療は公的医療保険適用外の自由診療です。
- 料金(税込):
- PFC-FD療法(PFC-FD2.0):片膝 1回(2V) 161,000円
- 培養幹細胞治療(ASC療法):片膝 1回 980,000円/両膝 1回 1,380,000円
- 主なリスク・副作用:注射部位の痛み・腫れ・内出血、まれに感染。効果には個人差があり、効果を保証するものではありません。
- 当院は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、再生医療等提供計画を届出済みです。
- 国内で医薬品として承認された治療ではなく、同一の成分・性能を有する国内承認医薬品等はありません。
- 運動療法・薬物療法・ヒアルロン酸注射・インソール作製は保険診療の対象です。







